日本一のモグラ駅で、熟成ビールを作ろう

もぐら駅での樽運び

前回の記事より、群馬県みなかみの土合駅およびそれに併設するDOAI VILLAGEにて、楽しみながら地域の自然へ対する取り組みが行えるビアキャンプフェスを行うことになりました。

そのイベントのスペシャルビールの一つとして、各ブルワリーは日本一のもぐら駅である「JR土合駅」にある熟成貯蔵室にビールを搬入することになりました。

この貯蔵室はもともとJR土合駅の運転事務室として使われていた部屋でしたが、今回JR高崎支社やJR東日本スタートアップ株式会社、そしてDOAI VILLAGEを運営するVILLAGE INCのご尽力により、今回ビールの貯蔵庫としてリニューアルすることになりました。

貯蔵室は土合駅の下りホームにあり、地下約70mのトンネル内部にあります。一方、上りホームは地上に位置するため、土合駅は上りと下りホームの間に486段の階段があるという、日本屈指のとてもユニークな駅となっています。

各ブルワリーはそれぞれ長期熟成させたいビール樽を持参し、地元ブルワリーであるOCTONE BREWINGに集合の上、その後水上駅から電車でビール樽を運ぶことになりました。当日はさすがスキーで有名な地域とあって、雪が降りしきる天候の中での搬入になりました。

雪が降りしきる群馬県みなかみ町のOCTONE BREWING

大雪により電車での搬入ができなくなり..

しかし搬入日は不運にも稀に見る大雪が降り、その影響でJR上越線が運転見合わせとなってしまい予定していた電車での運搬ができなくなる事態に見舞われました。

一同はなんとか持ってきたビールを貯蔵しようと考えた末、苦労覚悟で車で土合駅までビールを運び、そこから直接人力で486段をビール樽を担いで降りることにしました。

みなかみの中でも土合駅は谷川岳の麓に位置し、自然豊かな場所のため、当日は道がわからなくなるほどにとても雪深くなっていました。そのため雪をかき分けてなんとか駅まで樽を運び込みます。

思わぬ大仕事をすることになった一同は笑いを隠せませんでした。

雪深い土合駅。当日は大雪で電車での搬入ができなくなり、急遽人力での搬入に

いざ486段の階段へ

なんとか駅に樽を運び込みいよいよ日本一のもぐら駅の由来である486段の階段をビール樽を担いで降りていくことになりました。

この486段ができたのは、土合駅はかつて上越線は上り下りが共用の単線でありホームが地上だけにあったものが、1960年代に下り線が新清水トンネル内に開通したことによるものです。

その後、この地下トンネル内にあるホームは下り列車用、それまで使われていた地上のホームは上り列車用となったことで現在の構造になったそうです。

地下ホームへと続くトンネルは、一番下まで見えてしまいそうなぐらい、ひたすらまっすぐ階段が降りている構造となっていました。

1回目の搬入に集まったビールたち。これを担いで地下70mを降りていきます

それぞれのビール樽と共に地下へ

それぞれビール樽を手分けして担ぎ、一同ゆっくりと階段を降りていきました。

普段は谷川岳に向かう登山客に使われており、地上と地下を行き来するのにおよそ10分ほど要するそうです。

ただし今回は10L〜20Lあるビール樽を持ちながらのため、安全第一でビール樽を手分けして担ぎ、一同ゆっくりと階段を降りていきました。

おそらく486段を下ってビール樽を搬入したブルワー達は今までいなかったかもしれません。永遠とも思える時を感じながら、なんとか地下の深部を目指して降り進めていきます。

ひたすら続く階段に苦戦しながらゆっくりビール樽を搬入するブルワー達

運転事務室からビールの貯蔵室へ

途中休みながら、20〜30分ほどかけて、なんとか全員無事に地下ホームにたどり着き、ビールを貯蔵室に運び込むことができました。

谷川岳の麓、地下70mに位置するこの室内は一年を通して一定の温度を保ち、ビールに熟成をもたらします。

各ブルワリーが持ち寄ったビールも様々で、スコッチエールやベルジャンスタウト、レッドエールなどのモルトフォワードのビールや、一方でホップにキャラクターを持ったもの、またヒノキなどの副原料使ったものなど、

ブルワー達もこの環境下での熟成がビールにどのような効果をもたらすのか、とても興味をもって楽しんでいました。

貯蔵室は地下ホームにすぐ接しているため、土合駅を利用する乗降客には、ガラス張りで貯蔵ビールが見えるようになっています。興味のある方は是非ご覧いただければと思います。

もともと運転事務室だった部屋をリニューアルしたビール貯蔵室。

486段、ふたたび

ビール貯蔵という大事な仕事が終わった後、通常は地上か地下かいずれかのホームで電車を利用でき土合駅ですが、当日は上越線が運休のため、ブルワー達は再び486段を上り地上を目指します。

次回の搬入は大雪が降らないことを祈りつつ、日の差し込む地上目指して重くなった足を進めました。

光を目指して、ふたたび486段へ・・

駅舎を利用したカフェMOGURA

合計して約1000段の階段を上り下りした一同は、土合駅の駅舎を利用したカフェ「MOGURA」で暖かいコーヒーをいただきました。

かつての駅務室をリニューアルしたこのカフェは、こちらもJR東日本スタートアップとVILLAGE INC.が地域活性化の実証実験としてスタートし、現在は主に土日に営業を行っているそうです。

きっぷ売り場の表示がガラスに残ったままなど、昔の駅舎内の雰囲気を残したとてもユニークなカフェでした。

この日以降もさらなるブルワリーがビールを貯蔵していき、現在はおよそ250Lの様々なビールが土合駅に眠っており、2022年開催予定のもぐらビアキャンプのビール開栓を待っています。

みなさまぜひご参加いただければと思います。

土合駅の駅務室を利用したMOGURAカフェ

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