2021年10月初旬、廃棄パンを再利用したビールが静岡のフジヤマハンターズビールから発売されました。
この廃棄パンのビールは、去年より当ブルワリーで作られ、今年は10/16に世界食糧デーのある10月にあわせて醸造されました。 (去年の取り組みについてはこちら)
今年は地域のベーカリーのご協力にて、製造上どうしても出てしまう廃棄されてしまうパンを提供して頂き、
クラフトビールに再利用する事で、ビールを通じてフードロス問題に対する取り組みを行いました。
今回ご協力頂いたのは、地元静岡県の藤枝にある『もしもパン屋ができたなら』さん。
そしてブルワリーに程なく近い山梨県の河口湖町にある『FUJISAN SHOKUPAN』さんです。
また今年は、ビールのフレーバー付けに使用するコーヒーについても、廃棄予定のものを地元富士宮のカフェ『ten cafe』さんから提供頂きました。
地域の様々な方々からフードロスの取り組みに賛同して頂き、廃棄パンビールの醸造に協力頂きました。
今回使用した廃棄パンは約10kg。提供頂いた廃棄パンは醸造日まで大きく劣化しないよう、冷凍保存します。
そして、仕込みの際にはパンをなるべく解します。細かくする事で、パンの糖分をなるべく麦汁に移し、また移送等の工程でパンのかけらが配管に詰まってしまわないようにします。
解したパンくずは、マッシングと呼ばれるビールに必要な糖分を作る過程で投入します。通常のビール製造では、麦芽のでんぷんを麦芽が持つ酵素の力で糖分に変えていきますが、
廃棄パンビールでは麦芽に加え、廃棄パンのかけらも一緒にマッシングする事で、パンから取れる糖分も麦汁に溶け込ませます。
そして解したパンを麦汁に投入します。入れてみると、水分を吸ってお麩のようにフワフワと浮いていました。
パンが満遍なく麦汁に溶け込み糖分が十分取れるよう、パンを時々押し込んだり、レイキをしてよく撹拌させていきます。
糖分が取れたら、濾過の工程を経て、ボイルを行うタンクに移送します。パンを入れると麦汁の移送時にパンくずによる詰まりが起きるかもしれないと懸念していたのですが、問題なく移送できました。
そしてこの麦汁を沸騰させてホップを投入していきます。この工程では、ビールに苦味等のフレーバーをつけていきますが、今回はここに廃棄コーヒー豆も投入して風味付を行います。
グラインドされた豆からとても良いコーヒーの香りがします。パンとコーヒーがビールの中で合わさります。
そして完成した麦汁は、酵母によって発酵・熟成され、ビールへと変化していきます。
今回は、日本だけでなく世界でも課題となっている廃棄食材の削減という目的において、
地域のブルワリー、ベーカリー、カフェと業種の垣根を超えて取り組む事が出来ました。
今回再利用できた廃棄パンや廃棄コーヒーはほんの僅かな量であり、これだけでは課題の根本的な解決は難しいですが
地域に貢献する様々な業種の方々が、共にフードロス課題への意識を高めるきっかけになればと思います。