みんなでヒノキを間伐して、森の現状を知る

9月初旬、各地のブルワリーやビール関係者が静岡・富士宮に集いました。

この地でリバーガイドのNatural Actionそして林業を営む(有)モクセイの佐野 文洋さんの案内によって林業の現場に行き、また実際に参加者で間伐を行うことで森と里山の現状を知る取り組みを行いました。

(参加団体 県/地区50音順)

■静岡県

・静岡市 アオイブリューイング ~AOI BREWING~ 

・静岡市 イタダク

・静岡市 Emiko (ヨガインストラクター)

・富士宮市 ナチュラルアクション アウトドアツアーズ

・富士宮市 フジヤマハンターズビール / 浅間大社タップルーム 

■東京都

・板橋区 クランクブルーイング / クランクビール さかみちタップルーム

・板橋区 JAH JAH CHICKEN

・北区 十条すいけんブルワリー / Beer++(ビアプラスプラス) 

・北区 Letʼs Beer Works (醸造設備準備中)

・世田谷区 RIOT BEER

・文京区 カンパイ!ブルーイング

・港区 Inazuma Beer / Inazuma Dining

■埼玉県

⻨酒処ぬとり(開業準備中) 

■愛知県

Foyer

静岡・富士宮に集まったブルワリー・ビール関係者
間伐を体験するために各地から静岡・富士宮に集まったブルワリー・ビール関係者

林業と森

険しい山道を歩き、一同は林業の現場に到着しました。普段立ち入れない実際の林業のの現場に一同は驚きの連続でしたが、現場で作業を行なっていた井戸 直樹さんが案内してくれました。

井戸さんは、富士山麓で森林ツアーや体験、また狩猟関連のワークショップなどの活動も行う”森のたね“の代表でもあり、スギとヒノキの見分け方から林業における具体的な作業内容、そして森の植物や野生動物の生態の事など、木こりと猟師ならではの多岐にわたる説明をして頂きました。

林業の現場を案内して頂いた"森のたね"代表 井戸直樹さん

また、何十年も林業を営み森と共に生活してきた佐野さんのお父さんである佐野 博さんにもお話を伺うことができました。

博さんが林業を始めたばかりの頃は、建材として木材の需要が多く、人々は建材に適した杉や檜を植林し、林業を営んでいたそうです。

しかし次第にコストの安い海外の輸入木材が台頭してくると、国産木材の需要は減り、林業を営めなくなった事業者が多く廃業してしまいます。

その結果、間伐等の手入れがされなくなった人工林が放置され、生態系が歪になった森や林が日本に多く残る結果になりました。

日本の国土の1/4強は人工林、そしてその人工林のうち約8割は未整備の状態です。

富士宮モクセイ・佐野 博さん
富士宮で長年に渡り林業を営んできたモクセイ・佐野 博さん

間伐の必要性

実際に間伐がされなくなった人工林も見せてもらうことができました。この様な森は太陽の光が中まで届かず、地面に植物が育たないジメジメした暗い森になります。この環境では野生動物の餌もなく、森の生き物達が寄り付かない荒廃した森となってしまいます。

また、この植物がない地表となると、木から落ちる枝や葉が土壌の微生物によって分解される前に土壌と共に河川に流されてしまいます。この森林土壌は、河川を流れそれに繋がる海の生物に必要な栄養分となりますが、十分に落枝や落葉が分解されていない土壌が流されてしまうと、海の生物にも栄養が行き届かなくなり、海の生態系にも影響を及ぼします。

さらに、間伐をせず木々が密集すると互いの成長を阻害し合い、木が十分に根を張れなくなります。この様な地面は、台風や地震の災害で倒木や土砂崩れが起きやすい、人にとっても危険な土地となります。

このように、一度人の手で生態系を変えてしまった人工林は、原生林だった時の様な本来の機能を十分に発揮できなくなります。そのため、再び人の手で保全を行うことで、水と栄養が土壌に十分に保たれ、多様な生態系を持ち、そして十分に育った木々からたっぷりと二酸化炭素を吸収できる豊かな森に戻す必要があります。

未整備の人工林
間伐されず整備されなくなった森。薄暗い荒廃した森となっています

ただコストの安い輸入木材が豊富にある中、林業を営むことは容易ではなく、事業の継続には国からの補助金が必要不可欠といいます。

日本の国土の2/3は森林であり、この割合は森林率が高いフィンランドやスウェーデンに並び先進国の中でも有数の森林大国だそうですが、木材の自給率は現在もまだ3割程度に留まっているそうです。

話の終わりに、佐野さんは国産の木の良さも教えてくれました。

国産、特に自分が住む近くの土地の木材は、その土地の水、風、気候で育った木なので、当然その環境と相性が良く、長持ちするそうです。

遠く離れた気候が異なる土地で育った木より、自分が住む土地の環境で育った木を使うのが一番理に叶っている、と教えてくれました。

その土地で育った木は、その土地の気候に合った木材となる

みんなで檜を間伐する

そして次はいよいよ自分たちで実際にヒノキを1本間伐をすることになりました。

何人かのチームに別れて倒す木を選定します。木々の間が等間隔になるように、そして倒す方向を考えて、切り口を作っていきます。

木を切ることは一同初めてでしたが、佐野さんのアドバイス元、チームメンバーと一緒ににあれこれ考えながら楽しんで間伐を行うことができました。

間伐体験
倒す方向を考えながら切り口を作り、木を倒していく

木を倒した後は、それぞれが持参した斧やノコギリを使って枝を払い、用途に併せて木を短くしていきます。今回はビールの香りづけに使用するチップ用の檜はもちろん、キャンプで使うスウェーデントーチなども作ることができました。

製材とする場合には、しっかり乾燥させた後に適切な形にカットしていくそうです。木を切る所から林業の工程を実際に体験することで、普段何気なく存在する木材がとても身近に感じることができた貴重な経験となりました。

間伐体験の加工
自然を楽しみながら、自分たちで間伐した木材を加工していく

それぞれの木こりビール

持ち帰った間伐材の檜チップは、各ブルワリーにてビールの香りづけに使われ、それぞれの思い思いのヒノキビールを醸されます。

また11月には、その木こりのビールが楽しめるキャンプとビールフェスイベントも開催予定です。

この木こりのビールを通して、普段より少しでも多くの人が森について知り、考えるきっかけを作れれば嬉しいと思っています。

間伐体験をしたブルワー達
間伐ヒノキチップを使ってこれからそれぞれの木こりのビールを作ります

間伐体験の様子